5S活動変化への対応と5Sの基本

製造業とサービス業の現場で5S活動を指導した経験からの報告

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食品衛生の基本と5Sの徹底

                                                                                                                                                                                        

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食品関連会社の「清潔」は製造業を中心とした3Sの維持ではなく、整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・しつけの維持によって微生物レベルのきれい職場環境を実現することです。

 

更新: 2020/11/24

 

 

 

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1.食品業界の特徴

食品業界で先ず思いつくのは、菓子などの加工食品やレストランなどの外食産業ではないでしょうか。中でも外食産業の調理は以前から経験と勘が重要視され職人気質が受け継がれてきましたが、日本食ブームに支えられて食事サービスの普及した現代においては、誰が、いつ、どこで、どのように作っても同じ出来映えが要求されるようになりました。ここでは、食品業界の中でも5S活動の普及が遅れている外食産業について述べます。
 
 
食品業界は食品原料を調達する商社の後は、食品メーカーから食品小売店を通って消費者の手に渡るものと、商社の後、外食産業の店舗で調理され消費者に渡るものがあります。いずれの場合も工業製品とは異なる食品の特性をしっかりと理解したうえで、食品の品質をいかに向上させるかが課題となります。その食品の特性というのが次の5項目です。  
 
   1)人が中心とした労働集約型産業であるので人的側面に左右されやすい
 2)人の行為やパフォーマンスであるサービスの結果を数値化するのが困難
 3)人の食生活のサイクルに基づいているため時間の要素が大きい
 4)食材料は自然のめぐみに依存しているためバラツキが大きい
 5)食中毒を起こさない微生物レベルの衛生管理が最重要課題
 
これらの5項目については、「5S活動とは?業界や組織の目的にあった5Sの構図と進め方」の”サービス業の5S活動”にも記載していますが、簡単に説明すると次のようなことがいえます。

 

 

1) 人的側面により左右されやすい

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サービスの品質は、工業製品の品質と違って、人の心のあり方によって顧客に心のこもった誠実さ、安心さを与えることにあります。工業製品では顔色が悪くても作業手順書にしたがって決められたことを確実にこなせば問題は発生しませんが、食事サービスでは、お客様に気持ち良く食事をしていただく必要がありますので、元気な笑顔であいさつする必要があります。一方、厨房には人に頼った作業が多く調理器具としては、ガスレンジ、炊飯器、スチームコンベクションなどがありますが、最終的な品質確認は人の五感によるものが多いためヒューマンエラーが発生しやすい。

 

 

2)サービスの数値化が困難

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 先に示した食事サービスの品質は、「美味しさ」とか「楽しさ」などのように人の感性に基づく品質項目が多いため数値で示すことが難しい。サービスは物理量の長さや重さなどのように数値で表すことが困難なため、官能検査によるランク付けなどを使って評価する場合が多い。

 

 

3)時間の要素が大きい

 

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病院や介護施設などの食事サービスにおいては、決まった時間に食事を提供しなくてはなりません。お昼の食事は、12時に食べるのが一般的ですが、これを2時、3時に遅らせることは食事サービスとしての目的を達成できません。また、レストラン等の外食においても食事の時間帯になると大変混雑しますが、このような状況下でも気持ちよくおもてなしを行なうサービスは一瞬一瞬が重要であり、その良し悪しがその場で評価されることが多い。

 

 

4)自然からの産物である食材のバラツキが大きい

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調理材料は殆どが自然界の産物を利用しています。しかし、自然界の産物は天候に左右されるために、工業製品のように一定の条件の下で均一の品質を確保することが困難です。野菜や魚、肉にしても季節によって、バラツキが大きく、一つひとつの品質が異なります。

 

 

5)食中毒を起こさない微生物制御が最重要課題

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食事サービスにおいて最も重要なことは、土台となる衛生管理がしっかりとできていることです。栄養のある献立も美味しい食事も衛生的で安全な食事でなくては食事サービスの目的を達成できません。食事サービスは衛生管理が土台となるものであり、良好な衛生管理を維持するためには5Sの徹底が不可欠です。

 

   

  

2.人材確保の困難な時代の5S改善

平成30年厚生労働省から発表された「外食・中食産業における働き方の現状と課題について」では、次のような課題があることが提示されています。
外食産業においては、次のような課題が5S活動推進の壁になっています。これが食品の5S活動が工業製品の製造業と同じ手法で推進するのが困難であった理由の一つに挙げられます。従って、5Sは個別の職場環境を十分調査し適切な推進方法によって進めるべきです。

 

1)深夜・24時間営業・年中無休への対応

価格競争が厳しい業界であるため、処遇改善に必要な人材や賃金の確保が十分でない中で、利便性の追求による深夜・24時間の営業形態が拡大した結果、昨今の人手不足により安定した勤務シフトが組みづらい状況になっており、社会問題となりさかんに議論がなされています。

 

2)労働環境の改善 

  • 生鮮食品を取り扱うことから作業空間が低温状態(約15℃)の場合がある
  • 逆に、揚げ物・蒸し物等を調理する空間では、高温にさらされ続ける。
  • 作業工程によっては、同じ姿勢での単調作業が長時間継続する。
  • 人手を要する作業が多く、機械化が容易に進まないため、置かれた作業環境は過酷である。

 

3)経営理念の共有やモチベーションの維持・向上

業界全体として、従業員に向けた企業の経営理念の浸透が不十分。従業員の労働意欲や職業意識に影響し、労働生産性企業価値に悪影響を及ぼす可能性。

 

4)投資余力が小さい

  • 中小企業が多いため、資金力に乏しく、生産性向上に向けた投資をタイムリーに行うことが困難。
  • 人材の層が薄く、柔軟な雇用形態を導入するための仕事量の調整・再分配等が困難。人材不足が廃業に直結する可能性が高い。

 

上記のような報告がある中で働く人を確保するには、5S活動によって醸成される「モチベーションの向上と楽しい職場・働きやすい職場づくり」が、人材の定着・人材の確保に役立つことは言うまでもありません。

 

  

 食品衛生に関すること

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食品業界の大きな出来事として「食品衛生法」が2018年6月に改正され、2021年6月に猶予期間が終了し本格施行されます。この改正の主な理由は次のとおりです。

少子高齢化が進み家族構成や消費者の食に対する意識の変化による食生活の変化

・食中毒や食品による健康被害に対する意識の向上

・食のグローバル化に伴う、食品関連事業の国際標準からの遅れ

改正の一つにHACCP(ハサップ)の義務化があります。注目すべきことは、この改正の施行にあたって、食品業者の規模や業種などによって、次の二種類に分けて進められていることです。この考え方は5S活動の進め方に対しても、変える必要があることを示唆しています。

 

①「HACCPに基づく衛生管理」・・HACCPの7原則を要件として衛生管理を行う。

  例)食品や食品添加物の製造し、従業員が50名以上の事業所


②「HACCPの考えを取り入れた衛生管理」・・厚生労働省が内容を確認した手順書に沿って衛生管理を行う。

  例)飲食店、学校や病院などの給食施設など

 

つまり、ここで注意したいのは、業界の幅が広く、一つの方法ではすべての事業所で対応することができないと言うことです。つまり、5S活動の進め方も対象の企業の実態を良く調査したうえで、適切な手段・方法を使って推進しなくては良い結果は期待できないということです。

 

 

 

3.食品5Sの職場環境改善

清潔というと業種や考え方によって異なっています。いわゆる工業5Sでは、整理、整頓、清掃の3Sの維持ですが、食品業界が微生物レベルの清潔を目的としている点で違いがあります。また、食品業界の中でも5Sの定義は一定ではありませんが、微生物学的にもきれいな状態を保つという点では清潔に対する考え方は変わりません。工業5Sでも食品業界の5Sでも、5Sを定着させるということが前提です。

 

1)工業5Sの清潔

工業5Sの清潔は、「整理・整頓・清掃を維持し、誰が見てもきれいでわかりやすい状態に保つこと」です。この点が、次の食品5S,食品7Sの清潔と違います。

 

 

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2)食品5Sの清潔  2つの考え方

  • 食品5Sの清潔:調理機器、器具は洗浄・殺菌を行い、微生物学的にもきれいな状態にする。洗浄・殺菌は清掃の中に包含されています。

 

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  • 食品5Sの清潔:5Sが定着しており微生物学的にもきれいな状態を保つ、目的である。洗浄・殺菌は清掃の中に包含されており、清潔は直接的な「目的」です。

 

 

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3)食品7Sの清潔

基本の5Sに「洗浄」と「殺菌」を加えて7Sにして分かりやすくしたものです。
整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌に関するマニュアルやルールを守ることを躾でコント ロールし、清潔を「直接的な目的」としていることを示しています。

 

 

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