5S活動変化への対応と5Sの基本

製造業とサービス業の現場で5S活動を指導した経験からの報告

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5Sとは?5Sの意味と5S活動の基本

             

                                                     

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ステップ1:5S活動に関する情報収集
工場、オフィス、店舗などの職場で5S活動を始める時の最初のステップは、5Sの言葉の意味を理解するだけでなく、5S活動の本来の意図を理解し、科学技術の発展に伴う自社の職場環境や社員の価値観の変化に関する情報を集め分析し、正確な現状把握を行うことが効果的な取り組みのために必要であることを紹介します。

 
 
更新: 2021/8/30

 

 

1.5Sの意味と順番の意図

多くの組織で実施されている5S活動は、「整理、整頓、清掃、清潔、しつけ」の5Sを基本に、「整理、整頓、清掃」の3S活動 や「整理、整頓、清掃、清潔、しつけ、洗浄、殺菌」の食品会社の7S、このほか、組織の方針によって、2S、4S、6Sや8Sなどが実施されています。このようなSシリーズの活動を宣言していない多くの企業でも、職場安全活動や明るい職場作りなど何らかの取り組みがなされています。

 

先ず、基本となっている5S、整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seisou)、清潔(Seiketsu)、躾(Sitsuke)を取り上げます。その定義は次のとおりですが、組織によっては自社の用語を使って、多少変えている組織もありますが基本的な考え方は同じです。

 

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 ① 整理(Seiri)
   要る物と要らない物を区別し、要らない物を処分する
 ② 整頓(Seiton)
   置き場所を決め、いつでも、だれでも使用できるようにする
 ③ 清掃(Seisou)
   ゴミや汚れのないきれいな状態を保つ
 ④ 清潔(Seiketsu)
   整理・整頓・清掃された状態を保ち、きれいな状態を保つ
 ⑤ 躾(Sitsuke)
   決められたルールを正しく守る習慣をつける

 

この定義をよくみると、④は整理、整頓、清掃の3Sの維持であり、⑤は整理、整頓、清掃、清潔の4Sを実践するための規律として存在していますので、実質的に職場の環境を改善する行動は整理、整頓、清掃の3Sになります。このような理由から3S活動に力を入れている企業もあります。また、厚生労働省の飲食店の労働災害防止マニュアルでは、4S活動は職場の安全と作業者の健康を守り、作業効率アップの教育プログラムであるとの説明もあります。

一方、食品関連企業においてはいわゆる製造業の5Sでは食品会社の職場の環境を維持できません。その理由は、食品会社においては食中毒菌等の微生物レベルの清潔を維持することが大前提となっているからです。この微生物レベルの清潔については色々な考え方があります。これらの考え方の違いは、「清掃」と「清潔」をどのように定義するかで決まります。その一つは基本の5Sの「清掃」と「清潔」を次のように微生物レベルで定義する方法と、洗浄、殺菌を追加する方法の二通の考え方があります。

 

一つ目は、基本の5Sのままとすることです。
1) 整理、整頓、清掃、清潔、しつけ
  清掃:微生物の除去、化学物質汚染や異物混入防止、及び設備点検が含まれる
  清潔:調理機器、器具は洗浄・殺菌を行い、微生物学的にもきれいな状態にする

 

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2) 整理、整頓、清掃、しつけ → 清潔  
  清掃:ゴミや汚れのないきれいな状態を保つ、洗浄・殺菌を含む
  清潔:5Sが定着しており微生物学的にもきれいな状態を保つ、目的である

 

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3) 整理、整頓、清掃、修理・修繕、しつけ   →  清潔 
  清掃:ゴミや汚れのないきれいな状態を保つ、洗浄・殺菌を含む
  清潔:5Sが定着しており微生物学的にもきれいな状態を保つ、目的である
  6Sであるが5Sとして活動しているところもある。 

 

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二つ目は、基本の5Sに「洗浄」と「殺菌」を追加して7Sとすることです。
4) 整理、整頓、清掃、清潔、しつけ、洗浄、殺菌
  清掃:ゴミや汚れのないきれいな状態を保つ、設備点検が含まれる
  清潔:整理・整頓・清掃された状態を保ち衛生的な状態を保つ、目的である

 

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5) 整理、整頓、清掃、清潔、しつけ、洗浄、殺菌、整備  7S+整備
  清掃:ゴミや汚れのないきれいな状態を保つ
  清潔:整理・整頓・清掃された状態を保ち衛生的な状態を保つ、目的である

 

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このように色々な方法がありますが、企業の業種、業務形態、管理レベルなどの組織の実態に応じて最適な定義を設定する必要があります。5Sとは〇〇だと一律に定義づけることは困難です。自社にマッチした5Sを定義することが大事です。

しかし、5S活動を言葉の定義の理解だけで進めることは困難です。「 5S活動の進め方5S活動の実践ポイント」にどのように進めるのかについてまとめていますので参考にしてください。

 

 

  

 (一口メモ:食品5Sについて) 
・上記3)の7Sは、食品衛生ネットワークが2003年から提唱している活動です。

・洗浄とは、食品製造加工施設や設備・環境の食品残渣などの汚れ及び有害微生物を除去することです。
・殺菌とは、見た目のきれいさだけでなく、微生物汚染度を更に減少させ許容基準以下にすることです。

※ 食品5S活動の進め方は、「食品衛生の基本と5Sの徹底」

 

 

 

2.5S導入と職場の特徴

5S活動は職場環境の改善ですので職場によって異なるのは当然ですが、特に業種や業界によって職場環境に大きな違いがあります。製造業から出発した5S活動は今や全産業分野で大きな広がりをみせていますが、活動が形骸化した、効果が出ない、活動が続かず元の状態に戻ったなどの話をよく聞きます。これらの原因のほとんどは5S活動を推進するうえで必要なトップの理解、メンバー、時間、場所、改善、リーダーシップ、チームワーク等に問題があるということになるのですが、これらの課題を解決するためには、科学技術の発展、人々の考え方の変化など、職場の内部外部の変化に対する5S活動の進め方の変更が必要です。
5Sの定義や考え方は全産業において効果があり普遍的であると言われています。これは5S活動が企業の発展に重要であることを多くの会社が認めていることを意味するものですが、5S活動の手法や進め方などについて型にはめることは困難です。「ある企業で成功した5S活動も他の会社ではうまくいかない」「三年前まではうまく機能していたが、最近同じことをやっても効果がでない」というような変化があるのは当然のことです。
製造業からサービス業界に入り5S活動を推進するにあたって以下に列挙した事柄を考慮し、変化に対応した進め方を自ら工夫して進めていく必要があります。これはサービス業だけでなく業種を超えて5S活動を進める時の注意点であるとも言えます。

 

[品質のレベル]
車や電気製品の製造工場のように5S活動が徹底的になされ世界的にも品質が認められた企業では、徹底的に5S活動や5Sという言葉を使わなくても職場環境の改善活動を実施しています。このことは、食品業界や病院においても同じことで要求品質を確保するためには5S活動は欠かせません。5S活動ができている企業はその製品品質もすばらしいものです。

[安全への関心]
最近、マンションの建設現場に安全第一と一緒に「5S活動推進しています」という看板が貼り出されていました。危険と隣り合わせの職場では徹底した5S活動がなされています。一方、外食産業では食品安全が重要なウェイトを示しますが調理の過程で床にこぼれた油のために転倒するというような労働安全もあります。

[教育・訓練の必要性]
社員には、正社員、契約社員、パート社員などの異なる勤務形態の人々が働いています。特に、厨房においては多くのパート社員が勤務しています。これらの異なる勤務形態の人々が同じく5S活動に対する共通認識を持つことができるとよいのですが、多くの場合はそうではありません。また、人間は間違いをおかすものですが、業務における間違いがどの程度許されるかは、その作業の重要性や安全性により変わってきます。
工業製品の製造の場合は人と話をするのが苦手な人でも手順書どおりに作業をすれば問題ありませんが、サービス業の場合は多くの場合、人が相手ですので笑顔で話ができない人は、相手を喜ばすサービス業においては良い仕事ができません。このように個人の性格など人間的側面が重要視されます。

[作業場所の特殊な環境]
食品関係の「清潔な厨房」や「病院の無菌室」、半導体製造工場の「クリーンルーム」など、要求品質を作り込むためには特別な職場環境が必要な場合があります。特に、外食産業では微生物レベルの清潔な環境、異物混入のない環境が必要です。

[設備機器の活用]
工業製品に限らずサービス業においても設備器具の不具合により、問題が発生することが少なくありません。設備の自動化の程度もまた影響を与えます。古い機械を丁寧に使っている工場と、最新の設備とでは環境が異なります。

[職場の管理レベル]
現場における目標管理、啓発活動、改善活動、不良対策、作業手順書の作成など実施レベルに影響を受けます。5S活動は現場で運用されている管理システムに沿って運用されます。そうでないと、5Sのために特別なことを押し付けられてしぶしぶやるということになりかねません。例えば複数の工場が存在している企業においては、各工場の管理のレベルにあわせて運用手順を決めなくてはなりませんが、A工場では5S監査員がいて自社で5S監査できるが、B工場では監査のできる人材がいないので、A工場から応援にきてもらって5S監査を実施しているということもあります。

[企業の5S目的]
トップに叱られた時だけしぶしぶやる5S、建前だけは5Sをやっている会社など様々ですが、過去において、厳しい苦難を経験したオーナーがいる会社は本気で5S活動がなされています。

[業種]
自動車や電気製品など古くから5S活動が盛んな自動車業界や電機業界から、建設現場や化学工場、更に、人の命をあずかる医療業界や食品メーカーなどでも5S活動が行われています。しかし、これらの多くの業界の中でも5S活動のレベルには差があります。中でも、サービス業の労働生産性は製造業より低く、特に労働集約型のサービス業においては1人当りの生産性が低くなり、利益がでにくい、したがって人件費も抑えられることにより、社員のモチベーションが上がらないなどの課題があり、人が主役の5S活動にも影響を与えています。

 
[組織の大きさ]
一般的には大企業と中小企業とでは売上金額、社員数などに大きな差があります。その結果、5S活動を担う社員数や活動テーマ数など運用の規模が異なってきます。特に、一人でいくつもの業務をこなさなくてはならない中小企業においては、5S活動を担う組織や担当者が曖昧になり積極的な活動がなされない傾向にあります。

[全員参加]
自動車や電気製品など製造工場を有する職場では、全員参加の委員会やミーティングなどが容易である組織もあれば、運送業など絶えず外で走り回っていて、全員が集まるのは年に1回という組織もあります。

特に人手不足である食品業界はパート社員によって支えられており、その割合は50%以上という会社が殆どではないでしょうか。このような状況下では就業後にミーティングの時間を設けることは困難です。

一方、パート社員比率の少ない組織においては、正社員が中心になって5S活動を進めることが可能です。また、通常パート社員は時給いくらでという条件で毎月契約更新しています。

このような条件で働いていると会社への帰属意識は低いものになり、内部のコミュニケーション能力に影響を与えます。 以上より、パート社員比率の高い職場では、時間内にミーティングを開く必要が出てきます。あるいは、時間の確保がパート社員より比較的容易な正社員が、ミーティングの準備や資料を作るなどの検討も必要です。

 

 

3.5S活動のメリット・デメリット

5S活動は「職場環境を改善」する活動ですので大きなメリットがありますが、デメリットもあることを理解しましょう。

 

1)メリットとしては次のようなことがあげられます。

  • 業務効率の向上
    ①モノを探す時間がなくなり、ムダを省くことにより業務効率が向上する。
    ②原材料や部品、商品の管理が確実になり品質向上につながる。
  • 社員の意識改善
    ①働きやすい環境を整えることにより、社員の意識改善につながる。
    ②5S活動によりチームワークが向上する。
  • 職場環境改善
    ①職場内が整備され、労働災害の起こらない安全な職場をつくる

 

2)デメリットとしては次のような点があげられます。

  • 効果が出るまでには時間がかかり、中には年単位の時間を要する場合がある。
  • 職場に定着させるためには、活動を続ける必要がある。

  

このブログではこれらのデメリットを克服して、メリットを得る方法について話を進めていきます。

 

 

 

 

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4.5S活動で実施する基本的なこと

5S活動の効果に疑問を投げかける人がいます。その理由は、5S活動にかける時間に対する効果が少ないということ、更には、行き過ぎた5S活動により、かえって不便になっているのではないかということです。5Sを徹底するために業務効率を低下させていたのでは本末転倒ということです。しかし、なぜこのようなことになってしまうのでしょうか。その主な原因は、全員参加という5S活動の基本ができていないためです。

例えば、「帰る時には机の上にはモノを置かない。」と決めたとします。その結果、ある人から、かえって能率低下になるとクレームがあるようなケースです。なぜでしょうか?これは、5S活動そのものが目的となっているためであり、なぜ帰る時には机の上にはモノを置いたらいけないのかについて話し合っていないからです。皆が思い思いの意見を言いまとまらない?そんな状況では、後日問題となるのは明らかです。

5S活動とは5Sを徹底することだとよく言われますが、どういうことか具体的にいうと「5Sの定義を徹底して実行すること」と言い換えることができるでしょう。例えば、整理では、「必要なものと不要なものを区別して不要なものを処分する」これを徹底することです。しかし、徹底という言葉はあいまいで人によってその認識に差がありますが5S活動の徹底は次のような行動を実践することであると言えます。職場環境のバランスをとりながら進める配慮が必要です。

 

※整理
整理における徹底とは、不要なものはすべて廃棄し、不要品が発生しなくなるまで繰り返し改善する。 

※整頓
整頓における徹底とは、例えば、仕事がすぐに始められるように置き場所や置き方、 表示の見える化を工夫し、必要な時に必要なものが直ちに使用できるように改善する。

※清掃
清掃における徹底とは、仕事場を清掃・点検し、汚れた箇所や点検で発見した問題の原因を明らかにして改善する

※清潔
清潔における徹底とは、整理・整頓・清掃を継続して、ムリ、ムラ、ムダのない職場を維持するために絶えず改善する。

※しつけ
しつけにおける徹底とは、仕事に関するルールを理解させ、ルールを守れる人材を育成する。

 

もう一つ重要なことは、5Sは、整理→整頓→清掃というようにシリーズではなく、すべてが相互につながっているということです。このつながりをスムーズに動かす潤滑剤の役割をなすのが「しつけ」であるということです。「しつけ」は決められたルールを正しく守る習慣をつけると定義されており、以前は、他の整理、整頓、清掃、清潔のルールを守ることだとされていましたが、近年は業務に関連するすべてのルールと理解されています。これには、整頓や清掃手順だけでなく、職場ルールや製品規格、作業標準書などすべてが含まれます。

人を育てるという考えであった5Sの「しつけ」は、ISOの教育に対する考え方や派遣社員外国人労働者への対応に見られるような人手不足の時代になり益々重要視され、「しつけ」を5Sの基本に据える考え方へ変わってきました。

さらに、5Sの定義にあるように5Sの手法そのものが改善ですので、改善前後の職場環境がどのように変わったかに関する改善結果の確認が必要です。

 

仕事の瞬間、瞬間で5Sを実践

私は最初に工業製品の工場5Sを進めました。その後、サービス業の分野においては上記の「環境」の清潔、「教育・訓練」におけるヒューマンエラー、「全員参加」のミーティングの実施において、大きな違いがあることが分かり進め方を変えました。
先ず実施したのが5S活動の時間の確保です。5S活動は単に職場をきれいにするだけでなく、仕事の中で5Sを実践することにより次のように、作業がスムーズ実行され業務改善にもつながります。作業を実施しているその場所、その瞬間に5Sを実践します。
1.作業の見える化
仕事のその瞬間、瞬間で必要なものと不要なものを仕分けることにより、何が終わって何が終わっていないか「見える化」されます。
2.作業効率アップ
先入先出はもちろん、作業の順番や使用頻度に基づく食材や器具の配置で作業がスムーズに流れ、作業ミスも減少します。
3.職場の環境をよくする
5S活動により職場内のコミュニケーションが良くなり、みんなから改善のための知恵が出てきます。

 

5Sの「整理整頓」について

整理整頓は、きれいに並べ直したり積み直したりする整列や、見た目にきれいに並べる陳列とは異なるものです。
今まで作業台の上にあった物を作業台の下に置くと、作業台の上はすっきりときれいになり気持ちいいでしょう。しかし、使用するたびに作業台の下から引っ張り出さなくてはならなくなり、効率は下がってしまいます。これは5Sとは言えません。5Sの整理整頓とは、実行することで「探すムダ」や「見分ける手間」が省かれて作業に専念できることなのです。

 

5Sの「しつけ」について

5Sの中でも特に大事なのが「しつけ」であり、その定義は一般に次のような説明がなされています。

  1. 決められたルールや規律を守ること(3Sの定着、習慣化)
  2. 決められたルールに従って行動している状態(定着、風土)
3Sが定着し、決められたことを守れる風土になっている状態(1,2を合わせたもの)

  

さて、「しつけ」とは「決められたルールを正しく守る習慣をつけること」と定義されています。これは、社員がルールを守るように「しつける」ということではありません。「しつけ」とは決められたことを当たり前のこととして実行することです。

 

[しくみを作って、みんなでそれを守る]

5S活動の「しつけ」は5Sの中でも一番難しいとされていますが、それだけ強化しないといけないということでもあります。特に、自動化の進んだ製造工場より人を中心とした職場では「しつけ」の重要度は高くなり、難易度があがります。
最初の一ヵ月間は続けることができても、1年、2年と継続できるように人の行動を変えるのは難しいことです。ですから、仕組み作りが必要になります。例えば、整理は不要物のリストアップや不要物の廃棄処理手続きや報告書まで全員で手分けして実施します。記録は人の異動や設備の交換などがあっても、5S活動を停滞させることなく続けるためになくてはならないものです。

 

5Sを実践するための潤滑剤である「決められたルール」とは?

決められたルールには、次のようなものが該当しますので、これより「しつけ」は社会生活の上での土台であるということが良く理解できます。

1)5Sのルール
  職場で5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)について決めたこと
2)会社のルール
  就業規則、業務管理基準、標準作業など
3)社会のルール
  ・交通規則などの法令、業界団体の規則などの法令等
  ・一般常識といわれる挨拶など

しかし、上記の2),3)は1)の5Sのルールと少し意味合いが違います。なぜなら、躾でいうルールは皆で守りましょうというレベルのものですが、2)会社のルールの作業手順書などは、守らないと不良品や事故の可能性があるため厳格に守る必要があるルールです。3)社会のルールも同様です。そのような意味でレベルが違うことを理解して活動しましょう。

「正しく守る」とは?

「しつけ」は教育・訓練と言われています。「親の子に対するしつけ」、「学校でのしつけ」などを思いだす人も多いでしょう。しかし、仕事においては子供のしつけと違い簡単ではありません。先ず、正しく守るためには、ルールを正しく理解する必要があります。

「習慣をつける」とは?

教育・訓練を受け正しく理解したら、必ずルールを守ることができわけではありません。ルールを守るためには「納得」が必要です。納得とは、守らないとどうなるかということを、そのとおりだと認めることです。ルールを教育・理解・納得することが必要ということです。では、人は納得すれば習慣になるのでしょうか。これについては、Webの5Sの関連記事で事例を見つけましたのでそれを紹介します。 

[ 納得すれば本当に習慣づくのでしょうか ] 抜粋
例えば、車のシートベルトは殆どの人が毎回きちんと締めます。交通ルールを守っているのです。しかし、スピード違反を一度もしたことがない人はゼロに近いのではないでしょうか。捕まる、捕まらないは別として、時速30km制限の道路で、制限速度を守って走っている人は少ないと思われます。なぜシートベルトは守って、スピードは守らないか。それは、シートベルトをした方が安全というのは納得しているからです。しかし、時速30km以下で走らないと安全ではない、というのはあまり納得していないのです。人間、本来納得すれば実行するようになるのです。

  

 

5.変化に対応する5Sとは

5Sという言葉の起源について「経営論集」の中の「5S活動の生成と展開」(高木裕宣)に詳しく書いてあります。これによると、整理整頓から出発した職場環境の改善は、1965年頃には4Sに「しつけ」を加えて5Sというようになり、その後、5Sという言葉が一般的に使われるようになったと言われています。
しかし、現在のように、5Sという言葉が半世紀をすぎても多くの職場で使われ、5S活動が普及している背景には、次のような出来事があったようです。
それは、製造工場における品質向上や生産性の向上のために、開発部門では新製品を投入、技術部門では工程改善などに全社をあげて取り組んでもなかなか効果がでなかったのです。多くの企業が改善活動をやっても品質は良くならない、生産性が向上しないという経験をしました。そこで原因を調査した結果、

 

①工場の備品や工具などが決められたところにないため、探すのにムダな時間がかかっている。・・・整頓ができていない。

 

②清掃が不十分できれいにできていなかったために、製品に異物が混入していた。・・・清掃ができていない。

 

など、5Sに関連する基本的な問題が多く寄せられたようです。このような経験から、品質や生産性の向上をはかっていくには、「当たり前のこと、基本的なことをきちっとやっていかなければならない」ということが再認識されました。


この、当たり前のこと、基本的なことをきちっとやっていかなければならないということは、製造業だけでなくすべての企業に必要なことです。このことが、今日、多くの企業で5S活動が実施されている理由であると考えられます。

 

5Sという言葉が使われてから既に半世紀が経過しました。その間の社会の変化、とりわけ5S活動の対象とする職場環境がどれほど変化したかは言うまでもないことです。更に、人間の意識も大きく変化して、学校教育や社会制度も変化しています。5S活動もこれらの社会の変化に対応した進め方をしなくては、人々は5S活動の効果を得ることはできません。そうなると5S活動を継続することも不可能です。

 

 

 

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何のために5S活動をやるのですか?

             

                                                     

何のために5S活動をやるのですか?

 

 5S活動について先ず教わることは、5Sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」のローマ字の五つの頭文字がSであるので5Sと読んでいる。と教えられませんでしたか?このような5Sの定義は、いつも実施している整理、整頓、清掃の延長線上にあり容易に取り組めるため、整理すること、整頓すること、清掃することが5S活動の目的になってしまうことがあります。しかし、5S活動においてこれらは手段であり、何のために5S活動をするのかという本来の目的ではありません。 きれいな職場にするという目的が適切かどうかは、「なぜきれいな職場」にするのかということを正しく理解しているかどうかが重要なポイントとなります。この理解がないと職場環境を改善しようというアイデアが浮かんでこないため、5S活動が形骸化し継続できない状況に陥ってしまう可能性があります。

 
 
更新: 2022/9/12

 

 

1.5Sの言葉の意味と目的

 新型コロナ感染症の影響は、増収増益でプラスに動いた企業もありますが、多くは事業の再編成や休業を余儀なくされるなど、多かれ少なかれ何らかの悪影響を受けた企業が多いのではないでしょか。新型コロナも徐々に落ち着いてきました。職場の変化に応じて5S活動にも変化が出てくる可能性があります。
工業製品の製造業で始まった5S活動のそもそもの目的は「ムダをなくすこと」でしたが、今日では色々な5Sの説明がなされ、中には効果があるのかと疑われるものまであります。また、「効果」を出すためには、5Sの言葉どおりの行動だけでは不十分で、現状分析や改善が必要になります。これについては3章で、特に5Sの影響の大きいヒューマンエラーについて説明しています。

 

1) 5Sの言葉に基づく行動  

整理・整頓・清掃・清潔・躾の5Sをこれらの言葉を理解することは大事なことですが、5S活動をこの言葉どおりに行動することだと理解してしまっては、5S活動の意図する本来の目的を見失ってしまいます。例えば、整理の言葉の意味は、「必要なものと不要なものに区別し、不要なものを処分する」ことですが、整理することは、5S活動の最終的な目的を達成するための「手段」です。これらの5つの言葉は聞き慣れている言葉ですから、不要なものを処分して整理したことで5Sをやったと理解してしまうのです。こうなると、次に何をすれば良いのか分からなくなってしまい、積極的な活動が失われ活動が衰退してしまいます。

 

※5S活動の清掃、清潔の役割が重要な職場

食品会社においては、微生物レベルの清潔による食中毒の防止や毛髪などの異物混入防止という具体的な目標に基づく清掃が非常に重要ということになります。また、半導体工場の不良低減のためには、チリやホコリのない高いレベルのクリーンルームが必要になります。

 

※職場の改善という5Sの目的を忘れた整頓 

行き過ぎた5S活動により、かえって不便になっているのではないかと、5S活動の効果に疑問を投げかける人がいます。例えば、「帰る時には机の上にはものを置かない」と決めたとします。その結果、ある人から、翌日、同じ資料を再度机に広げないといけないから、かえって能率低下になるとクレームがあるようなケースです。なぜでしょうか?これは、関係する仲間の全員と、「なぜ帰る時には机の上にものを置いたらいけないのか」、「机の上をきれいに片付けることにより、その日の作業をリセットして翌日の作業を新しい気持ちで始められる」「整理、整頓をどのように実施すれば効率よく仕事が始められるのか」について話し合いがなされていないからです。一部の人だけの意見で進めてしまったのでは、後日問題となるのは明らかです。

 

※きれいにするだけの掃除5Sから5S改善へ 

きれいにする掃除5Sがきっちりできるようになったら、できるだけ早く5S改善へ進みましょう。5S改善を進めていると5Sの効果が出てきます。

例えば、

  • 製造工場の組み立てラインにおいて、それぞれの機種によって異なる部品を準備する担当者が、その製品の仕様に合わせて個別に部品を集めて組立ラインまで運んでいたのを、台車に機種毎の部品リストを取り付けて、「今、必要なものだけを効率良く準備する」というアイデアで時間短縮ができた。
  • 皆から購入要望のあった「掃除が楽にできる新しい掃除機」が入り、掃除機の取り扱い説明書を読み上げて理解を深めている。
  • 経管栄養剤の誤配膳が止まらないので、置き場の表示と類似品は色による識別管理に加え、管理表によるチェックなどの5S改善手法を実施した。

職場で起こる出来事というのは、大小の差はあってもまったく5Sに関係ないということはありません。仕事中であっても、そうでなくても5S改善手法をどんどん取り入れて改善しましょう。今、起きている不具合は、今、改善しないと事故につながる可能性があります。

 

 

.5S本来の目的

 上記のように、5Sの言葉の意味どおりの活動や一部の人の活動になっている場合は、何のために5S活動をするのかという目的を皆で再確認する必要があります。
5S活動の目的を聞くと、「5S活動は職場を整理・整頓・清掃してきれいにすることでしょう。大切なことは分かるが直接利益に貢献しませんね。」と答える人が少なくありません。このように、仕事に追われながらメリットを見いだせない5S活動を行うのは誰もが嫌なものです。5S活動の本来の目的について分かりやすく表現すると次のようになります。

 

 

これを図で表現すると次のようになります。5S活動のテーマは仕事に集中しているからこそ、その改善点が見えてきます。

 

 

この意味は、5Sの言葉を正しく理解し、仕事のやりにくいところや、もっと簡単に楽に仕事をするために改善することはないかなど、テーマを選び出して改善するというものです。改善することによって人は成長します。このように社員の一人ひとりが能力アップを実現することが会社のレベルアップになり、ひいては業績アップに貢献し会社の発展につながります。

 

 

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