5S活動の進め方5S活動の実践ポイント
ステップ3:5S活動計画に基づく行動
職場によって5Sの目標は異なりますが、最終的な目的である企業体質の強化に向けて、どのような手段で、どのルートを通って進むかという「5S活動の進め方」と、職場での5Sをどのような方法で進めるかという「5S活動の実践ポイント」に分けてみましょう。
1.5S活動の進め方
5S活動に不可欠なこととして、「全員参加」と「自発的行動」があります。これらは会社が続く限りずっと実施しなくてはなりません。ですから、5S活動では最初から大きな効果を狙わず、成功体験を積んで徐々に広げていくことが大事です。なぜなら、5S活動は自分たちの仕事がうまく進むように、今までより少しでも楽にできるようにする活動だからです。つらい思いだけで楽しくない5S活動は長続きしません。
1)組織に最適な5S活動の進め方
5S活動を開始した最初の一年間は活発であったが、数年経った今は熱が冷めたように5Sという言葉を聞く機会も少なくなり、5S活動を開始する前の状態に戻ってしまったという話を聞きましたが、実際、このような組織は少なくないようです。また、5S活動を10年以上もやっているけど、いわゆる「掃除5S」からレベルアップできていない企業などさまざまです。
「5Sは普遍」、「5Sはどんな業種でも適用可能」という言葉を、「5S活動の進め方」も同じでよいのだと誤解を受けている組織もあります。実際は、5Sの言葉の意味は「当たりまえのこと」であるため共通することですが、業界や工程によっては「清潔」がそうであるように、意味が変わります。又、工場と運送業界などではミーティングの方法も変わります。組織にあった方法に修正して5S活動を推進しなくてはなりません。
- 業種による5S活動の違い
食品7Sの生い立ちは、最初は工業製品の5Sの清掃に洗浄・殺菌を加えて食品衛生新5Sとして実施されていましたが、後に洗浄・殺菌を独立させて7Sとなっています。工業製品の5Sの清潔は、整理・整頓・清掃によりきれいな状態を保つことであり、いわゆる見た目の清潔ですが、食品業界の職場の目的である清潔は微生物レベルの清潔です。5Sは当たり前のことであると言われていますが、工業製品の製造業と食品業界においては、このような大きな違いがあります。業種によって職場環境が異なると5Sにも影響が出てきます。
- 5S活動の進め方の違い
もっとも大きな違いは「5S活動の進め方」です。職場の環境や人の意識が変化した現実を無視した、いや現実に配慮せずに進めている会社や、5S活動を始めるにしても、コンサルタントを呼んでキックオフ大会を開いて進めたほうがうまくいく企業もあれば、じっくり進めた方がよい組織もあります。患者の治療も、手術が必要な患者もいれば、漢方が良い患者など様々です。重要なことは、その患者のことを良く知り、適切な治療法を見つけ実施することです。例えば、中小企業の中には、再生が急務の会社もあります。そのような状況下では早く効果の出せる5S活動を推進していくことが求められます。
2)5S活動の種類
①2S活動
「整理・整頓」の2Sによってきれいにしていこうという職場で実施されます。また、整理・整頓は5Sを実現するため最初に始めることであり、工場などの職場の安全と作業効率の向上に直接関係します。
・・・手作業を中心とした職場やスポーツクラブや事務などの特定の小規模組織で集中的に実施される場合が多い
②3S活動
「整理・整頓・清掃」の3Sによって職場をきれいにしていく活動です。現場の全員が参加して活動することにより、効果を実感できるため現場の作業に直結したコンパクトな進め方といえます。
・・・設備を中心とした職場や安全・効率・快適な職場を目指す中小企業が多い
③3S+2S=5S活動
「整理・整頓・清掃・清潔・躾」の5Sを、現場で実施する「整理・整頓・清掃」の3Sと、管理監督者が中心となって実施する「清潔・躾」の2Sに分けて推進する。
・・・2S,3Sの最終目標としての5Sに加えて、整理、整頓、清掃を基本とした活動が有効な組み立て製造業などが多い
④ 整理・整頓・清掃・清潔・躾の5S活動
5つのSを使って進めていくものです。比較的大きな組織や、清潔に特別な意味を込めて定義している場合があります。
・・・推進できる仕組みを構築できる組織で主に製造業の工場や病院、清潔を目的とする食品関連会社など
⑤ 整理・整頓・清掃・清潔・躾+洗浄・殺菌の7S活動
・・・清潔の定義が整理・整頓・清掃の維持ではなく、微生物レベルのきれいな職場と定義している食品関連会社など
⑥ その他
・・・5Sに洗浄、殺菌を加えた食品7Sだけでなく、「作法」や「整備」などを加えた活動によって業績向上をはかっている企業もあります。更に、3定(定位置・定品・定量)をセットにして、2S3定、5S3定(トヨタ式)などがあります。
また、クリーンルームや厨房の「清潔」を特別に定義した4Sもあります。
※清潔とは3Sが維持されている状態
5Sの中で言葉の意味と定義に違いがあるのでは?と言われるのが、「清潔」と「躾」ですが、「清潔」は整理・整頓・清掃の3Sを推進するために、日本人の清潔を好むという国民性を考慮し精神的なよりどころとして使われたようです。(5S活動の生成と展開<高木裕宣>参照)
・・・このことが、現在一般的に説明されている清潔の定義に通じています。
製造業の「清潔」の定義は、整理・整頓・清掃の維持、つまり、整理・整頓・清掃の3S活動のルールを決め、それらが守られている状態のことです。また、先の清潔の生い立ちをみると、清潔には「標準化」や「気持ちの良い職場」を意味するという展開の意図も理解できます。
一方、食品業界では製造業の5Sを手本に始められたのですが、食品業界の「清潔」は製造業とは異なり職場の最優先事項であり、次のように定義されています。
食品業界の「清潔」の定義は、人がきれいな気持ちよい職場と感じるレベルではなく、顕微鏡レベル、微生物レベルのきれいな職場環境です。
上記に大まかな分類を述べましたが、このように5S活動の進め方には色々な方法があります。尚、5Sの詳細については、「5Sとは?5Sの意味と5S活動の基本」をご覧ください。
2.5S活動の課題
② 5S活動は業務の中で行う → 人手不足や働き方の変化への対応
③ 報酬、褒める、喜びを与える → 現場の社員のやる気
1)簡単な5S活動も、続けるのは簡単ではない
5S活動を長続きさせ効果をあげるためには、どのように5S活動を進めたらよいのでしょうか、人は目的を共有できればチームワークが生まれると言われています。では、どうしたら目的を共有できるのでしょうか。上司が一生懸命目的や仕事の重要性について話をしても、自分には関係ないやとよそを見ている人がいます。このような人たちは5S活動についても同様で、やりたくないのです。このようにいくら精神論でやっても効果につながらない場合が少なくあります。
2)5S活動が続かない原因
5S活動が続かない原因は、多くの方が調査・分析して、ほぼ出尽くした感があります。それは、次のような内容です。しかし、5S活動が続かない理由は、これらの原因が複雑に絡み合って組織固有の原因があります。そのことを、しっかりと見極めないで、対策を次から次へと実施してもモグラたたきになる可能性があります。下記の<対策>の一つ一つは良いことですが、そのことを組織の中にでのように展開し成果をあげるかということは別個のモノです。
1) 何のためにやるのかという、5S活動の目的を理解していない
3)5S活動の時間を作る工夫
5S活動は職場環境の改善であると説明しました。この職場環境は、業界や職種によって違いがあります。よって、5S活動の進め方は違います。
サービス業では製造工場のように、毎週、全員が集まってミーティングを行うというのは、なかなかできないのが現状ではないでしょうか。では、どのように5S活動を進めるか?
それは、5S活動のやり方を変えることです。5S活動は、「時間を決めて一箇所に集まりミーティングすること」だけが5S活動ではありません。忙しい時は数分の打ち合わせだけにして、週に1回の短時間のミーティングで進捗状況を確認するなどです。
業種によっては、その特質に応じて次の5S活動の方法を取り入れて5S活動を推進しましょう。
一つ目は、業務の中で5Sを実践する
二つ目は、コミュニケーションの強化による相互協力をする
三つ目は、忙しい時ほど、改善のネタを見つける
四つ目は、朝・昼礼や職場ミーティングでとりあげる
五つ目は、忙しい時でもわずかでも改善活動に時間を割く
5S活動が利益につながることを、理解することなしには継続するのは困難です。
4)5S活動を続ける秘訣
「5S活動を続ける秘訣!」 ↓↓↓
5S活動を続け、定着させるのに多くの人が苦労してきたように、5S活動は素晴らし効果が期待できるものの、その分「5S活動は続けるのが難しい」という弱点があります。・・・「3.5S活動のメリット・デメリット」参照
5S活動は、他の管理手法と違って職場の全員が自らの意思で実行するという5Sへの理解と協力で成り立っています。
しかし、「自分はやる必要がない」「どうでもいいや」と考えるようなモラルの異なる人は、上記<原因>5)のように指示に対して「やらされ感」を感じてしまいます。
これによって、<原因>6)で述べたように、社内で5S活動について温度差が生じることになります。
5S活動の成功事例として、強力なリーダーシップや経営危機からの脱却の記事を見ますが、定着させるためには特殊な環境ではなく平常時に、誰でも5S活動を続け効果が得られる活動でなくてはなりません。
ここで言うリーダーシップとは、5S活動に対する理解だけでなく、本気であるということです。5S活動の重要性を説明して要請するだけでは不十分であって、覚悟を持って本気で取組み周囲を感化する熱意を持っているということです。
そこで、この弱点を克服する方法についてノンテクニカルスキルを活用する方法を紹介しますので、「5S活動にノンテクニカルスキルを活用しよう」をご覧ください。
また下記の記事も寄り道してください。
5S活動の実践ポイント
清潔とは整理、整頓、清掃されたきれいな状態を維持することと定義するならば、整理、整頓、清掃の3項目と「しつけ」の順番を考えることになります。
五つの中で「整理」を最初に実施することについては異論はないでしょう。不要なモノが職場にあっては仕事が進まないのは誰もが理解できるからです。問題は整理の次が「整頓」なのか「清掃」なのかということです。
皆さん、実際に自分が整頓の後どのように行動しているか思い出してみましょう。すると、「整理→清掃→整頓」あるいは「整理→清掃→整頓→清掃」という人も多いのではありませんか、これは人の行動パターンや統計データからも裏付けられているようです。
最後は「しつけ」です。しつけとは決められたルールが当たり前にできるように習慣づけることですが、その方法は5Sを通してその人が成長するように指導することです。
1)「整理」の進め方
整理が進まない場合は、「不要なものを廃棄する」という方法から「今、いるものだけを残す」というように考えてみましょう。
何を不要品とするのかという判断基準を決めた「不要品判断基準表」を用意する。人は、いざ捨てるとなるとなかなか捨てられないものです。事前に判断基準を作成しておき、それに従って処置を決めることでスムーズに実行できます。
「整理」とは「要るもの」=「使うもの」を判断すること
不要品の抽出に漏れがないように持ち込み禁止物、許可のない私物、故障・破損により使用できない器具などが記載された「不要品リスト」を作成する。数が少ない場合はよいのですが、多くなると漏れが生じます。アッ!これも不要品だということのないようにしましょう。
選び出した不要品を、廃棄するのか保管するのかなどの処分を行う。処分するために承認や許可が得にくい職場では、面倒だといって放置される可能性があります。どのような手順で処分を決めるか前もってルールを決めておくと効果的です。
① 仕事場や倉庫庫、休憩室などを定期的に見回り維持されているか確認する。
② 仕事場への不要品の持ち込みを防止する。
③ 不要品の発生をおさえる。
2)「整頓」の進め方
原材料、調味料、調理機器、調理器具、食器、献立表、マニュアルなど。
使用箇所、使用頻度に応じてモノの置き場所を決める。調理場、食材庫、休憩室など。
定品(何が) → 名称
使用頻度の高いモノは手前に置くなど、どこに(定位)なにを(定品)いくつ(定量)置くかを決める。
いつでも、誰でも取り出せ、もどしやすい置き方を決める。袋、箱、ケースなどの保管容器も決める。
① 時間を決め、定期的に見直す。
② 原材料の補充や入れ替えの時に乱さない。
③ 多くの場合、元に戻すときに乱れる。
どこに何が入っているか分かっており問題なく仕事はできているのに、なぜ表示が必要なの?どの程度細かくラベルを作って明示しないといけないの?
整頓で大事なことは作業工程の流れを考えたモノの管理です。これが、整頓とはきれいに並べることではなく、使いやすくすることであるという根拠でもあります。こに何がおいてあるか分かっていて表示が必要ないほどの経験がある場合でも、モノを取りに行く時間や探す時間が発生していないかという視点で考えましょう。「どのように置いたらそのようなムダがなくなるか」考え実行しましょう。
※元に戻す器具や備品などは、元に戻すときに乱れる
※元に戻さない材料などは、取るときに乱れる
3)「清掃」の進め方
清掃とは、職場を清掃・点検し、汚れた箇所や点検することですが、業務内容によっては特別な環境を必要とする職場がありますので、それによって違いがあります。
個別の仕事中に行う清掃は一つの作業が終わるたびにこまめに実施します。例えば、機械加工における切粉の除去などは、まとめて清掃の時間をとらず加工が終わるたびに取り除くことにより常にきれい作業環境を維持できます。散髪屋の床に落ちた毛髪の清掃も同じように、一人終わったら床をきれいに清掃し次の人に気持ちよく座ってもらっています。
更に就業時の清掃においては、機械をウェスで拭いている時にいつもと違うこと、例えば、温度が高いとか床に異常に油が漏れているなどの気づきによって事故の未然防止につなげることもできます。このように基本の5Sの清掃には設備点検が含まれるということを指しています。
レストランなどの厨房の清掃の目的は、安全で美味しい食事をつくるために、常に清潔で衛生的な調理場の環境を確保することです。5Sの中でも清潔に与える影響が最も大きいのが清掃です。清掃が不十分であった場合は、食中毒菌の増殖を助長させる原因や、食事への異物の混入の原因をつくることにもなります。
1.清掃場所を決める
材料置場、作業室、倉庫、トイレ、休憩室などの清掃場所を洗い出す。理由があって対象から外す場所、壁との隙間などまで詳細に決める。そうしないと、ここはめったに使わないから対象外だと自己都合で決めてしまいます。
2.清掃担当を決める
清掃担当表を作成し割り付け掲示する。共同使用場所は当番制が好ましい。各区域の清掃責任者を決める。
3.清掃方法を決める
清掃対象の一つひとつについて、ホウキ、モップ、布巾などの何を使うか決める。
4.清掃道具を準備する
清掃対象の一つひとつについて、清掃用具を洗い出し、必要数の用具を決められた場所に用意する。
5.全員参加で実施する チームワークの基本です
何時から・何分間行なうのか決め全員で実施する。
6.清掃後のチェック
ゴミや汚れを取り除くだけでなく、掃除をする過程で細部まで点検し、微生物や衛生害虫の発生しない状態になっているかチェックし記録を残す。
7.汚れの発生源対策をする → 清潔のレベル
① ホコリ、汚れ、ゴミに気づく眼を持つ。
② 汚れたら、その場で取り除く。
③ 汚れの発生源を絶つ。
[課題]
清掃記録表に記載されていない箇所はどうするのか?それらの清掃記録はどこに書くの?清掃範囲と方法があいまいになると塵や埃がたまりやすい。
[対策]
清掃計画表は作業場の業態や規模に応じて様々なものが使われていますが、清掃計画表に書いてある対象箇所と現場が一致しない場合は、見取り図などを使用する。
特に清掃においては、手順と判定基準を教えないと清掃は定着しません。なぜなら、清掃は職場環境に大きな影響を与えてしまうからです。例えば、病院の清掃、半導体製造のクリーンルーム、衛生管理の必要な厨房などの清掃においては、手順と判定基準に基づく規定が必要です。
4)「清潔」の進め方
1.整理・整頓・清掃の正常、異常の判断基準を明らかにする
2.日常の活動に落とし込まれている
3.全員が3Sを実践し、実施状況を定期的にチェックしている
4.整理・整頓・清掃の3Sが定着している
5.社員全員の取り組みにより3Sが維持されている
[課題]
清潔やきれいという言葉の意味は環境によって違いますが、整理、整頓、清掃を維持することですので、しつけと似ていますが「清潔」と「しつけ」の違いを理解していますか?
5)「しつけ」の進め方
決められたルールを正しく守る習慣をつけることです。具体的には、整理・整頓・清掃の3Sが常に正しく実行されることを維持することと、汚れの発生源対策などの予防対策について自発的な活動ができるようにすることです。尚、5S活動の「しつけ」には社会人としての規範も含まれており、5Sのなかでも一番難しいと言われています。
なぜなら、「しつけ」は自らの力だけで自然とできるようになるものではありません。自然とできるようになるまでは教育や指導によって繰り返し徹底する必要があります。
「ルールを守らない人を責めない」
社会人としての規範、5Sのルール、規定・基準、作業標準書、作業指示書、緊急時の支援体制等の業務に必要なルール。
・朝礼で周知する。
・誰が教育するのかを決める。
推進リーダーによる監視と指導を行う。
・不要なものを置いていない。
・モノが乱れない。
・職場が乱れない。
理由を確かめて改善する。
① なぜ、守れないのか原因を明確にし、指導する。
② コミュニケーションの充実や、やる気を起こさせる。
このようにしつけにおける活動とは、ルールが習慣として守れるように教育や訓練を続けることを指しています。