5S活動 変化への対応と5Sの基本

製造業とサービス業の現場で5S活動を指導した経験からの報告

5S活動にノンテクニカルスキルを活用しよう

                                      

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以前、ノンテクニカルスキルに関する講演を聞く機会がありました。それは航空業界や医療業界などリスクの高い業界で活用が進められています。

 

1.ノンテクニカルスキルとは何か

間違いを犯してはいけない業界の例としてとりあげられるのが航空業界です。航空業界の安全管理は医療安全の歴史より古く、医療安全は航空業界の安全管理を元に発展してきました。
航空業界において、種々の航空事故の原因分析を行った結果、事故は機器や空港、天候などの問題よりも、人間の問題(ヒューマンファクターズ)が原因であるケースが多いことが分かりました。また、その対象となる人間の問題も、操縦のスキル(テクニカルスキル)よりも、むしろ状況確認、チームワークなどの認知的、社会的、個人的なスキルの原因が多くを占めるといわれています。

図はSHELモデルと言われるもので、航空業界で提唱されました。4つの要因と中心の当事者との相互関係に注目して原因を究明し対策を検討するモデルです。中心のLは自分自身で、もう一つのLは自分以外の人を表しています。この「L(自分)」と「L(自分以外の人)」を点線で囲んだ部分における関係をうまく合致させて被害を小さくするための能力をノンテクニカルスキルと読んでいます。

 

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医療チームの安全を支えるノンテクニカルスキル(大阪大学)より

 ノンテクニカルスキルとは、自分たちが今まで培ってきた専門技術をうまく活かして皆でチームとして良い仕事をするための潤滑剤であるということができます。日本ではノンテクニカルスキルは、専門家や先輩のやり方から学ぶ「暗黙知」として習得するものだとされてきており、トレーニングの対象として取り上げられていませんでした。「ノンテクニカルスキル」という言葉は、現在多くの医療従事者などリスクの高い業界に知られており、各分野でノンテクニカルスキルを向上するための訓練が取り入れられています。

 

 

2. ノンテクニカルスキルに関係する事故  
医療事故の根本原因は、テクニカルスキルよりもチームのコミュニケーション不足やリーダーシップの欠如などノンテクニカルスキルに関する問題が多いという説明がありました。怒鳴る、見下すなどの問題行動が多いとコミュニケーションや協力を得るのが難しくなり、医療事故が増える傾向があることが分かっています。
様々な事故におけるエラーの約75%は、ヒューマンエラー(ヒューマンファクターズ)が要因となって発生していると言われています。先日、NHKのニュースによりますと、国土交通省は、去年までの5年間に日本の沿岸で衝突や転覆などの事故を起こした船舶のうち77%にあたるおよそ8,300隻は、不十分な見張りや不適切な操縦など人為的ミスが原因であったと報告しています。この数値は2:6:2の法則や2:8の法則にあるように5S活動に批判的な人の割合も約2割いるということになるようです。

 

3. ノンテクニカルスキルの分類とリスク

緊急時における人間の特性と限界により、適切な行動や正しい判断が阻害されるリスクに対するマネジメントの必要性について以下の説明がありました。
人は専門的な知識や技術を持っていても、おかれた状況によっては適切に対処できないことがあります。それは人間の特性や限界であることを教えるものです。この一人の限界を乗り越え、チーム全体で望ましい結果を得るためのスキルがノンテクニカルスキルです。それにはどんなものがあるか、そのスキルによってどんな効果を得られるのかということです。

 

<サービス業の5S活動>

まだ記憶に新しいところでは、コンビニエンスストアのショーケースに入った姿や寿司チェーン店のネタをゴミ箱へポイ捨てした動画をSNSへ投稿するなどの問題行動が世の中を騒がせるという事件がありました。これに対して企業はしっかり社員教育するとの報道がありました。このような職場は食品業界だけでなく、多くの業界で多かれ少なかれ存在しており、人手を必要とするサービス業の中にも5S活動を活発に進めている企業も少なくありません。そこには、5S活動継続のポイントがあるようです。
5S活動はチームで活動しますので、チームのメンバー全員が協力しなくては良い成果を上げることができません。チームはメンバーの構成によって色々なチームがあります。先ず身近なチームとして家族があります。そして、学校やスポーツチームなどがあります。デパートのフロアごとの販売チームやレストランなどに限らず多くの職場でチームという単位で活動しています。

5S活動においても職場ごとに決めた5Sチームも例外ではありません。航空業界や医療チームに比べれば緊急事態におけるリスクは遥かに小さいために実施する訓練も軽いものかもしれません。しかし、考え方は共通ではないでしょうか。ノンテクニカルスキルの中で特に参考になるところを抽出してみました。

 

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1) 状況認識
ミッションの前・進行中・後において正しい状況を把握する。状況認識がうまくできていないと、それに続く判断や行動を誤ってしまいます。
① ブリーフィング(事前打ち合わせ)
ミッションの前に関係者全員でブリーフィングを行い、状況の認識を共有する。この中には処置の目的だけでなく、一連の手順に加え緊急事態対処法を含めます。ブリーフィングには想定し得る緊急事態への対処方法や関係する人々とのコミュニケーションなどが含まれるとされています。航空業界ではどんなに飛行機が遅れてもブリーフィングをしなくてはいけません。通常5~7分程度と言われるブリーフィングをフライト毎にすべて実施しています。その目的は次のようになっています。

a. 安全で確実な仕事を実施するための意思疎通を図る(目標、手順のポイント)
b .リーダー(機長)の意思を徹底する
c .緊急事態など何か起こった場合の役割分担を確実に確認し合う

ブリーフィングはチームメンバー全員で実施、「状況説明」と「事前打ち合わせ」の要素を含んでいます。そして、これらを頭の中でシュミレーションすることが重要です。

 

② 振り返り(デブリーフィング)
ミッション終了後に、メンバー全員で自分のやったこと考えたことなどのノンテクニカルスキルを重点的に振り返り、課題を明確にして次につなげるものであり、いわゆる反省会ではありません。テクニカルスキルを中心に「振り返り」が行われ、建設的、前向きに、うまくいったこと、うまくいかなかったことを、お互い責め合いなしの議論を通じてメンバー自らの気づきで次回のパフォーマンスを向上させるものです。
結果よりもプロセスに重点をあてノンテクニカルな観点からチームパフォーマンスを振り返る。自分は?チームは?どうすれば次はうまくいくのだろうと気がねなく言える雰囲気が必要です。

 

2) 意思決定

人はチームで困難なミッションに挑戦する際には、下記の「サンクコストの呪縛」や「自信過剰」「一点集中」などにより、前進したいという気持や成功するに違いないという考えが高ぶっていくといわれています。


① サンクコスト(Sunk cost埋没費用)の呪縛
回収できない時間や投資、労力をサンクコスト(埋没費用)と呼び、これを将来の意志決定に反映させるべきではないという鉄則です。しかし、サンクコストにとらわれて将来の選択を誤ってしまうケースは決して少なくありません。これだけ費用をかけたから、もう少し出費することによってこれまで払った費用が丸々損しないで済むと考えて赤字の運営が続けられることもあります。


② 自信過剰
自分がどれくらいの力を持っているかについて過大評価してしまう状況は、深刻な状況下で難しい意思決定が必要な場面でしばしば見られる。自分は大多数の人より優れていると考える心理、これは誰もが持っていると言われています。


③ 一点集中(とりつかれ)
人間はある一点に集中していると、他の予期しない出来事に気づかないという能力の限界を皆さんも経験されているのではないでしょうか。

 

 

3) コミュニケーションとチームワーク
適切な意思決定や正しい状況認識のためには、チームメンバーが上位の人に声かけすることが非常に重要であるが、私たちは、上司や先輩といった権威勾配に逆らって意見を言うことは難しいことを経験している。

 

 

4) リーダーシップとフォロワーシップ

リーダーシップは素質のあるトップリーダーだけに必要とされる能力ではなく、チームの全員がそれぞれの役割を認識してリーダーシップを発揮する能力のこととされています。また、チームのそれぞれのメンバーにはチームのリーダーや他のメンバーを支援する能力、すなわちフォロワーシップが必要です。チームで業務を遂行する際は、この両方の能力が必要とされています。

 

5S活動においてもチームメンバーは役割に応じたリーダーシップを発揮すべきであり、リーダーはできるだけチームメンバーに話させるようにすることが大事です。それにより、声を出す、意見を言う習慣ができ、何かいつもと違う、変だなと思ったら声を出し言ってもらえるようなチームを作りたいものです。ノンテクニカルスキルはチームで良い仕事をするための潤滑剤ですので、全員が個人のノンテクニカルスキルを磨きたいものです。ノンテクニカルスキルとは5Sの「しつけ」に近いものがあります。大切なことは、これが人間の特性であり限界であることを認識したうえで不利な状況に陥らないように、又陥ったときに局面を変えることができるようなノンテクニカルスキルを身につける努力をしましょう。

 常に危険がつきまとう建設現場や化学工場などでもノンテクニカルスキルに関する地道な取り組みがなされているようです。一般的にサービス業はこれらの職場より危険性は低いといえますが、人的要素の占める割合が大きなサービス業においてノンテクニカルスキルの考え方を活用できないか検討を進めています。

  

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 1.ノンテクニカルスキルと5S活動

  

 誰もが5Sの重要性は理解しているが継続できずにいるのはなぜでしょうか、どうすれば持続できるのでしょうか。それは、自分で気付き、自分でやる、そして、ルールが守れるように、守りやすいように、「やり方」を変える。そうすることによって自発性が生まれます。・・・そんなこと、言われなくても分かっていますよ。

 

「かたづけろ!」と怒られてやる整頓はその時だけで、ほとぼりが冷めたら元にもどります。自らの意思で行動する5S活動こそが継続できます。掃除をしろ、整理整頓を怠るなといわれると誰もが反発します。掃除でも、自分から進んで自発的にやった掃除とやらされてやる掃除では、見た目はきれいでも仕上がりが違います。・・・それも、経験して分かっていますよ。

 

何事も「目標」が共有できたら、活動の方向が明確になりモラルが向上し、チームワークも生まれます。しかし、それができないから困っていると言うわけです。これらの問題は、複数の人によって活動する場合に起こる共通の問題と言うことができます。

 

  1. 5S活動をやる時間がないという人の本音 本来の業務ではないのでやりたくない、余計なことだからやりたくない、できれば避けたいと思う、そんなことやる余裕がない、自分のプラスにならない、このような反応は、仕事量が膨大で「やらされ感」を持ったまま仕事をしている人たちがいます。このようなケースは、ルールの異議を考えず、今までやっていたからとりあえずやっているという場合が殆どです。
  2. 私だけなんでやらないといけないのと他人の非協力的な態度が不満 仲間とのコミュニケーションが不足しており、相談する相手がいない場合、何で私だけがやらないといけないのという気持ちになり、創造性に欠けるチームができる。
  3. 5S活動が自分に対する業務改善の効果を理解していない 5S活動によって自分の仕事がどれだけ楽になるか理解していない。淡々と目先の業務をこなしており、変化を好まない。

 

これらの不満から浮かび上がってくるのは、共通の認識、目的の共有、楽しい、表彰される、優位になる、仕事が楽になる対策をすることです。どこの企業にも2割ほどの反対者はいるという2:6:2の法則があります。まずは、反対する2割の人は相手にせず、積極的な2割と中間派の6割の合計8割の人を対象に成果を示し取り組みましょう。反対派に負けない強いリーダーシップが必用です。では具体的にどうすれば良いのでしょうか。

  

2.5S活動に必要なノンテクニカルスキル

5S活動を継続するためには次の事柄が重要です。 
1) ボトムアップによる意見の吸収

現場の従事者のやる気が重要です。指導者は雰囲気作りに専念し決して強制しない。


2) 5S活動は業務の中で行う

特に人手不足の影響の大きい外食業界は、パート社員が多く就業後に時間を設けるこ  とは困難です。パート社員比率の少ない組織においては正社員が中心になって5S活動を進めることが可能ですが、パート社員が中心の職場では時間の使い方は異なります。パート社員が中心の職場においては、業務の中で5S活動を進めることが必要です。つまり、組織の現場力に合わせた5S活動を行うということです。


3) 報酬、褒める、喜びを与える 

これは以前からモラールが低いからなどと言われていますが、多くは精神論として片付けているのです。ですから、最初のうちは一生懸命やっていた5S活動もいつの間にか元の状態に戻ってしまうという繰り返しです。

また、人は目的を共有できればチームワークが生まれると言われています。では、どうしたら目的を共有できるのでしょうか。上司が一生懸命目的や仕事の重要性について話をしても、自分には関係ないやとよそを見ている人がいます。このような人たちは5S活動についても同様で、やりたくないのです。このようにいくら精神論でやっても効果につながらない場合が少なくあります。

 

そこで、このような状況を解決するために、5S活動で必要なノンテクニカルスキルを、「状況認識」「意思決定」「コミュニケーション・チームワーク」「リーダーシップ」に区分してみましょう。

 

 1.5S活動をやる時間がない → 状況認識

仕事が忙しいという場合はどのような対策が必要でしょうか、これには5S活動の重要性を理解できていないために、正しく状況を認識できていな場合も含まれます。

   ・5S活動と企業の方針とのつながりを理解する

   ・業務分担が目的達成のために適切であり、健全であることを理解する

   ・思い込みによって事実と異なることを認めてしまう 

     

 2.5S活動に全員の協力が得られない → コミュニケーション・チームワーク、

                      リーダーシップ

自分だけどうしてやらなければならないのか、全員が思い思いの仕事をしておりお互いが非協力的である。

   ・改善シートの掲示により、チームワークの成果を分かちあう

   ・簡単な目標の達成で成功体験を体得して維持継続する

   ・朝・昼礼などでの話し合い情報の共有化をはかる

 

 3.業務改善をやろうという気持ちがうすい → 意思決定

5S活動によって仕事が改善できることを知る。

   ・改善活動結果に応じた報奨金制度をつくる

   ・改善効果に応じて表彰することにより、改善の必要性の理解を高める

   ・改善して良くしようという自発的な行動につなげる

 

 

3.ノンテクニカルスキルを高める訓練の事例

自らがどのように5S活動に取り組んでいるかをチェックする5S自己チェック表を作成し、自分の行動をチェックしましょう。自己啓発のために5S自己チェック表を活用した改善を進めることも一つの手段です。片付けだけの5Sが一通りできるようになったのであれば、これからは、レベルアップをして改善力を成長させていきましょう。レベルアップといっても、難しいことをするのでありません。簡単にできることを、笑われるようなことを確実に実施することから始めます。


成果を出す5S活動にするためには、片付けスタイルの5Sから脱却しなければなりません。片付けを繰り返していても不要なモノを生み出す発生源を無くさなければ、いつまでも片付けをしなければなりません。不要なモノを生み出すプロセスを改善して、片付けをしなくてもいつも綺麗で仕事のしやすい環境になっている職場を作ります。

5S活動に対する自分の行動を自らチェックすることにより、ノンテクニカルスキルの向上に役立てようというのが自己チェック表です。5S自己チェック表の狙いは、

  1. 5S活動の結果を出すことであり、仕事のしやすい環境を実現する5S改善につなげるためです。
  2. 自己啓発に役立てることです。その一点目は、自発的な行動を呼び起こす。自己チェックにより、守られていなかった項目の重要性を認識することによりルールを守ろうと言う自発的な行動が期待できます。二点目はミスを少なくする。人は思い込みや勘違いをする生き物ですが、そうならないように、自ら、自身に問うことによってミスを少なくすることができます。自己チェックはヒューマンエラー予防の一つとして効果があることが確認されています。

 次に5S自己チェック表をどのような場で使うかについて、三つの使い方の事例を説明します。

  1. 朝昼礼やミーティングなどでの読み合わせです。各項目の定義と説明を朝昼礼や職場ミーティングで読み合わせをした後、自己チェックしましょう。
  2. 自己チェック結果の改善事例を朝昼礼やミーティングで発表することです。自己チェックの結果に基づき改善したことを朝昼礼やミーティングで発表し、メンバー全員の意見を聞き参考にしましょう。・・・コミュニケーション・チームワークのスキルアップ
  3. 自己チェックの結果、複数の人が、改善が必要であるとした項目です。このような項目については、メンバー全員が協力して改善する必要があります。

 

 

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