5S活動変化への対応と5Sの基本

製造業とサービス業の現場で5S活動を指導した経験からの報告

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何のために5S活動をやるのですか?

             

                                                     

何のために5S活動をやるのですか?

 

 5S活動について先ず教わることは、5Sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」のローマ字の五つの頭文字がSであるので5Sと読んでいる。と教えられませんでしたか?このような5Sの定義は、いつも実施している整理、整頓、清掃の延長線上にあり容易に取り組めるため、整理すること、整頓すること、清掃することが5S活動の目的になってしまうことがあります。しかし、5S活動においてこれらは手段であり、何のために5S活動をするのかという本来の目的ではありません。 きれいな職場にするという目的が適切かどうかは、「なぜきれいな職場」にするのかということを正しく理解しているかどうかが重要なポイントとなります。この理解がないと職場環境を改善しようというアイデアが浮かんでこないため、5S活動が形骸化し継続できない状況に陥ってしまう可能性があります。

 
 
更新: 2022/9/12

 

 

1.5Sの言葉の意味と目的

 新型コロナ感染症の影響は、増収増益でプラスに動いた企業もありますが、多くは事業の再編成や休業を余儀なくされるなど、多かれ少なかれ何らかの悪影響を受けた企業が多いのではないでしょか。新型コロナも徐々に落ち着いてきました。職場の変化に応じて5S活動にも変化が出てくる可能性があります。
工業製品の製造業で始まった5S活動のそもそもの目的は「ムダをなくすこと」でしたが、今日では色々な5Sの説明がなされ、中には効果があるのかと疑われるものまであります。また、「効果」を出すためには、5Sの言葉どおりの行動だけでは不十分で、現状分析や改善が必要になります。これについては3章で、特に5Sの影響の大きいヒューマンエラーについて説明しています。

 

1) 5Sの言葉に基づく行動  

整理・整頓・清掃・清潔・躾の5Sをこれらの言葉を理解することは大事なことですが、5S活動をこの言葉どおりに行動することだと理解してしまっては、5S活動の意図する本来の目的を見失ってしまいます。例えば、整理の言葉の意味は、「必要なものと不要なものに区別し、不要なものを処分する」ことですが、整理することは、5S活動の最終的な目的を達成するための「手段」です。これらの5つの言葉は聞き慣れている言葉ですから、不要なものを処分して整理したことで5Sをやったと理解してしまうのです。こうなると、次に何をすれば良いのか分からなくなってしまい、積極的な活動が失われ活動が衰退してしまいます。

 

※5S活動の清掃、清潔の役割が重要な職場

食品会社においては、微生物レベルの清潔による食中毒の防止や毛髪などの異物混入防止という具体的な目標に基づく清掃が非常に重要ということになります。また、半導体工場の不良低減のためには、チリやホコリのない高いレベルのクリーンルームが必要になります。

 

※職場の改善という5Sの目的を忘れた整頓 

行き過ぎた5S活動により、かえって不便になっているのではないかと、5S活動の効果に疑問を投げかける人がいます。例えば、「帰る時には机の上にはものを置かない」と決めたとします。その結果、ある人から、翌日、同じ資料を再度机に広げないといけないから、かえって能率低下になるとクレームがあるようなケースです。なぜでしょうか?これは、関係する仲間の全員と、「なぜ帰る時には机の上にものを置いたらいけないのか」、「机の上をきれいに片付けることにより、その日の作業をリセットして翌日の作業を新しい気持ちで始められる」「整理、整頓をどのように実施すれば効率よく仕事が始められるのか」について話し合いがなされていないからです。一部の人だけの意見で進めてしまったのでは、後日問題となるのは明らかです。

 

※きれいにするだけの掃除5Sから5S改善へ 

きれいにする掃除5Sがきっちりできるようになったら、できるだけ早く5S改善へ進みましょう。5S改善を進めていると5Sの効果が出てきます。

例えば、

  • 製造工場の組み立てラインにおいて、それぞれの機種によって異なる部品を準備する担当者が、その製品の仕様に合わせて個別に部品を集めて組立ラインまで運んでいたのを、台車に機種毎の部品リストを取り付けて、「今、必要なものだけを効率良く準備する」というアイデアで時間短縮ができた。
  • 皆から購入要望のあった「掃除が楽にできる新しい掃除機」が入り、掃除機の取り扱い説明書を読み上げて理解を深めている。
  • 経管栄養剤の誤配膳が止まらないので、置き場の表示と類似品は色による識別管理に加え、管理表によるチェックなどの5S改善手法を実施した。

職場で起こる出来事というのは、大小の差はあってもまったく5Sに関係ないということはありません。仕事中であっても、そうでなくても5S改善手法をどんどん取り入れて改善しましょう。今、起きている不具合は、今、改善しないと事故につながる可能性があります。

 

 

.5S本来の目的

 上記のように、5Sの言葉の意味どおりの活動や一部の人の活動になっている場合は、何のために5S活動をするのかという目的を皆で再確認する必要があります。
5S活動の目的を聞くと、「5S活動は職場を整理・整頓・清掃してきれいにすることでしょう。大切なことは分かるが直接利益に貢献しませんね。」と答える人が少なくありません。このように、仕事に追われながらメリットを見いだせない5S活動を行うのは誰もが嫌なものです。5S活動の本来の目的について分かりやすく表現すると次のようになります。

 

 

これを図で表現すると次のようになります。5S活動のテーマは仕事に集中しているからこそ、その改善点が見えてきます。

 

 

この意味は、5Sの言葉を正しく理解し、仕事のやりにくいところや、もっと簡単に楽に仕事をするために改善することはないかなど、テーマを選び出して改善するというものです。改善することによって人は成長します。このように社員の一人ひとりが能力アップを実現することが会社のレベルアップになり、ひいては業績アップに貢献し会社の発展につながります。

 

 

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