5S活動 変化への対応と5Sの基本

製造業とサービス業の現場で5S活動を指導した経験からの報告

5S活動 5S活動をヒューマンエラーの予防に役立てよう

                                                                                                                                                                                                                  

1.ヒューマンエラーとは
    レストランなどの外食産業で発生する異物混入や配膳ミスなどのクレームの多くは、決まっていることをやらなかったため、あるいは禁止されていることをやったために発生していますので、それらはヒューマンエラーに該当します。また、衛生環境をいくら整備しても、守るべき手順を無視すれば事故は必ず発生します。手洗いやまな板の使い分けなどの手順を無視すると衛生問題が発生します。また、毎日の繰り返し作業につきものなのが、「思い込み」や「慣れ」による間違いです。このようなヒューマンエラーは、その発生した原因別に次のように分類できます。

f:id:g5skaizen:20181110153543j:plain

 

2.ヒューマンエラーの種類
下記の参考資料をもとにヒューマンエラーを分類してみました。

f:id:g5skaizen:20181019223738p:plain

 

図の1)から7)について具体的な事例を下記に説明します。


1) 無理なこと(認知能力の限界) 
無理な事とは、人の能力を超えた作業があった時に、それに対応できずにエラーが発生する場合です。

f:id:g5skaizen:20181020202030j:plain
それって無理なこと!

           人の認知能力の低下を考慮して対応する!

 

例えば、パーティー参加人数を口頭で15人から17人に増やすように連絡を受けた時に、17人ではなく18 人と聞き間違ってしまったというようなケースがこれにあたります。
人の五感にも限界があります。
大事なことは口頭ではなく、必ず文書で連絡する、受け取る時も文書で受けるというのもこのような間違いを防止するためです。過去に口頭で言ったことが相手に伝わらなかったために発生した事故は少なくありません。
無理な事とは、このように人の認知能力の限界を超えたために発生するエラーです。
(事例)
注文書の文字が小さく見にくかったので、「オレンジジュース」と書いてあるのが分からずオレンジジュースを付けなかった。
(説明)
これも担当者の視力の低下という認知能力の限界を超えた作業のために発生したエラーです。人は大人になり年をとると年齢とともに視覚・聴覚・触覚・臭覚・味覚の五感や体力も低下していきますので、人のこれらの能力と作業負荷には、常に注意を払わなくてはなりません。この場合、5Sの識別管理を利用し文字の大きさを〇〇mm以上と決めておくことによりこのような事故は防ぐことができます。

 

2)うっかり(勘違い)・・・人間の特性「行動」

指示書の見まちがいや思い込みによる間違いがこれに該当します。ミスの原因の中でも、うっかりによるミスは少なくないようです。このようなミスは誰でも経験し、苦い経験があるものです。

f:id:g5skaizen:20181101222543j:plain width=

やっちゃいました・・・

          でも、整理ができているとミスはおこりにくい!

(事例)
在庫してある経管栄養剤を取りに行った栄養士〇〇さんは、いつも棚の右側に置いてある経管栄養剤Aが左側に置いてあったので、経管栄養剤Bを間違って手に取りトレーにセットした、その後のチェックでも間違いが発見されず、患者様に配膳された時に看護師の方が気付いた。
(説明)
このような取り違いを防止するためには、次のような対策が考えられます。


[とり違いによるうっかり防止]
a. 同じ所に置かない
間違いやすい物を同じ所におかなければ、取り間違う可能性がなくなります。
b.ルールを作る
同時に異なるものを取り扱わないなど、「しくみ」を作る。
c.色や形で見分けるための識別をつける棚に置き場所の表示をすることは当然のこととして、例えば、マーカーで献立表の経管栄養剤Aを緑色に、経管栄養剤Bを黄色に色を付けて識別するというようことです。これらa,b,cの5Sの識別管理に加えて次の指差し呼称で防止することが可能です。
d.指差し呼称をする
間違い防止のためによく使用される方法に「指差呼称」という方法があります。この場合、注意が必要な事は、識別する部分を確認するということです。例えば、この事例の場合、「経管栄養剤よし」では不十分であって、「経管栄養剤Aよし」というように、識別が必要な部分の「A」を言わなくては十分とはいえません。
この時、声を出して、指でさすことが重要であるといわれています。声を出すことで大脳が一斉に活動すること、また他の事を考えられないために集中できるメリットがあるといわれています。

[指差し呼称]
連絡表から作業指示書に書き写す時の間違いを防止するための指差し呼称

配達先を6号棟東を6号棟西と書いてしまったというミスについても、同様のことが言えます。この場合、「6号棟よし」では不十分で、識別箇所の東を入れて、「6号棟東よし」でないといけないということです。この手のミスはベテランになればなるほど増えしかも頑固です。

 

[思い込みによるうっかり防止]
a.思い込みに合わせる
思い込みによるヒューマンエラーの場合は、「思い込みに合わせる」という対策があります。例えば、調理の時、塩と砂糖の調味料をよく間違うので容器の形状を替えて区別していたが、いつも右側に砂糖があると思い込んで間違っていたので、対策として左右を入れ替えたというような場合です。このように、思い込んでいる状態に現状を変更して一致させることです。
b. 統一する
ここでいう統一するとは標準化のことです。例えば、調理機械を同じものに統一して操作ミスをなくするなどがあげられます。
c. どちらでもよい
どちらでもいけるようにすること。融通を利かすことです。
d. 識別表示ははっきりと
明瞭な表示などによって防止しようというものです。
e. 最悪の状態を考える
最悪の事を考えて行動することです。今まで大丈夫だったからという理由でリスクを甘く評価してはいけません。例えば、たびたびトラブルを起こしていた炊飯器が、ある日スイッチが入らなくなったが、今回もすぐ良くなるだろうと原因を調査しているうちに時間が経過し、予定どおりに食事を提供できなかったというような場合です。このような時は、ごはんが炊けず食事が時間どおり提供できないという最悪の状態を考えるということです。
f. 落ち着いて一歩引く(視点を変える)
問題から一歩引いて、客観的な目でみることです。例えば、何回計算しても食数が一致しない場合に、見方を変えて先月の実績と比較しながら確認したところ、数字を読み間違っていたことが分かったというような場合が該当します。

 

3)し忘れ・・・人間の特性「行動」

し忘れはラップスとも言われ、会議の予定を忘れてしまい会議に出席しなかったというようなミスで、よく経験することです。

f:id:g5skaizen:20181101223052j:plain width=

すっかり忘れちゃって・・・

                                 人は忘れるということを理解しないといけないのだが!

(事例)
し忘れは毎日のように私たちの周囲で発生しています。取引先から請求書を受け取ったが来客があり忙しい日であったので、後で処理しようと思っているあいだに忘れてしまい指定の支払日までに処理できず信頼を失う事態になった。
(説明)
この問題では、請求書を受け取ったが次のアクションを起こすことを忘れてしまっています。このような時は、連絡を受けてそれを次の動作に展開したことを確認するための、何らかのミス防止のバックアップができておれば良いのですが、連絡を受けっぱなしになってしまったのです。

やろうとする本来の業務の前の作業は忘れる可能性が高い、例えば食事という本来業務の前に薬を飲むのを忘れるようなケースがこれに該当します。

一方、エアコンの掃除を終わらせたが、エアコンの上に点検工具を置き忘れたまま運転を開始したというような、本来業務の後の作業を忘れてしまった場合です。このように、本来業務の前後の作業においては、「し忘れ」というエラーが発生する傾向があります。

さて、人のし忘れにより事故にならないように安全装置が付いている場合があります。例えば、コンロの異常高温防止装置ですが、この装置を過信して温度があがったら自動的にスイッチが切れるだろうと考えて、そのままにしておいたために鍋から噴き出してコンロを汚してしまうという事があります。し忘れによってこのような事態にならないように注意が必要です。

4)能力不足・・・人間の特性「行動」
仕事に対して必要な技能がなかったためにおかしたミスです。
(事例)
ハンバーグステーキの生焼け問題調理方法の説明を受けた時、自分では問題なく調理できると思い、フライパンに油をしいて焼きはじめた結果、表面をほどよい色に焼きあげるのに時間がかかり、配膳時間も迫ってきて動揺し肉の赤みが残っているものを提供してしまった。

5)知識不足・・・人間の特性「認知」
仕事に対して必要な知識がなかったためにおかしたミスです。特に教育・訓練で重要な事は、何故そのようにしないといけないのかという理由を教えることです。

f:id:g5skaizen:20181101223122j:plain width=

知らなかった?

                                日常のコミュニケーションで事前に知る!

(事例)
a.改訂された作業手順書の内容を正確に理解していなかったために、担当者に誤った説明をして作業を混乱させてしまった。
b. 新人の調理師が翌日使用の冷凍アジの仕込み段階において、冷蔵庫による緩慢解凍をしなければいけないところを流水によって解凍を行った。 
(説明)
1番目のa.作業手順の改訂は改訂された理由と目標をしっかり理解していなかったという知識不足であり、2番目のb.は冷凍魚を解凍する時は、袋から出すと魚の旨みがなくなってしまうという知識不足のために発生したものです。「知らないこと、できないこと」はしない。知らないことは聞く、できないことは訓練する、ということを守ることです。この意味で仕事につく前の教育・訓練が、予防につながっていることの重要性が理解できます。


6)違反・・・人間の特性「行動」
違反とは決められたルールを守らなかったことにより発生するヒューマンエラーです。初心者の違反は知識不足であっても熱心にやった結果として違反する場合が多いですが、熟練者の違反は意図的で故意である場合が多くあります。熟練者の場合は初心者の場合と異なり、規則やマナーについては良く知っているのですが、意図的にこれに従わなかったために発生するものです。このような違反は故意ですので必ず理由があり、また人の性格が影響する場合があります。

f:id:g5skaizen:20181110161818j:plain width=

ルールが守れない?

                                 しつけが不十分なためにおこるエラー!

[初心者の違反]
a. 身についていない 
b.はずかしい
[ベテランの違反]
a. 善意や好意 ・・自分だけが遅れてしまっては迷惑をかけると思い違反する。 
b. いい格好・・・・自分より技量の低い人に対しておかす。
c. 安全ボケ 
d.面倒は手順の手抜き


(事例)
a. ネギの袋を開ける時に包丁を使用して開封したために、汁物の中に万能ネギが入っていたビニール袋の切れ端が混入した。
b. 缶詰工場の冷凍庫の庫内温度は毎日作業前後に点検し、温度記録表に記入するように決まっていたが、いつチェックしても問題ない状態が続いていたため、昨日の作業後チェックして問題がなかったので、今日は作業前に確認しなかったが温度記録表には昨日の作業後と同じ記録を残した。

(説明)
一番目のa.は、ハサミでカットするのは面倒だとして、ビニール袋を包丁でカットする手抜きです。二番目のb.は、安全な状態が続いているために、冷凍庫の温度についての認識が低くなり作業前に確認しなかったものです。これらのミスは勤務年数の長いベテランでもおかします。
違反に対しては決して責めるのではなく、守れなかった理由を聞きいっしょに考えて対策するという態度が必要です。

 

7)ミステイク・・・人間の特性「判断」
今までは行動そのものの間違いでしたが、ミステイクに分類される失敗は、動作以前の段階で間違っており、行動の結果、うっかりミス(錯誤)であったことが分かるケースです。
例えば「〇〇駅は△△線の電車」と思いこんで乗っていると、終点まで行っても〇〇駅はなくどんでん返しを受ける事です。また、目的の店は7階にあると思い込んでいて、エレベーターに乗って7回のボタンを押したら違う店であったという場合もこれにあたります。更に事例をあげると、電話番号の「3」と「6」をつい押し間違うのが「うっかり」で、電話番号を間違って覚えていて「6」を押すのがミステイクです。

 

3.ヒューマンエラーの対策と予防を5S改善で
ヒューマンエラー対策の第一段階は「問題を認識する」ことです。問題であると正しく認識できるようになるためには、問題が発生しているかどうかを感じる意思がないと問題は発見されずに通り過ぎていきます。いつもと少し違うのではないか?大きな問題になるのではないか?と感じ取る力が必要です。

 

f:id:g5skaizen:20181121202026j:plain

 

(1)ヒューマンエラーの対策
真の原因を追究すれば、答えはおのずから出てくる
  a. 「現場」「現物」で
  b. 「あるべき姿」「原理原則」に基づいて
  c.   再発防止につながる要因が出てくるまで調べる。

    d.5S改善をヒューマンエラーの防止の環境に使う。

(2)ヒューマンエラーの予防  
予防効果を高めるためには、問題が発生しにくい環境を整えることが大事です。問題が発生しにくい環境を作るためには、ヒューマンエラーの問題だけでなく、関連する周囲の問題も含め一体となって処理しなくてはなりません。中でも上記の1)無理な事、2)うっかり事故、3)し忘れ、4)能力不足、5)知識不足は5S活動により削減の可能性が期待できます。

 

(3)ヒューマンエラー防止の個人の努力の必要性
次の図はヒューマンエラーの当事者を中心にして、「ソフトウェア」「ハードウェア」「環境」「当事者以外の人間」「管理」に分類し、その関係を示したm-SHELモデル(エム-シェルモデル)と呼ばれるものです。 

f:id:g5skaizen:20181019224233p:plain

      

図の m はこれらの要素の周りを衛星のように回りながら、不具合が発生しないように各要素を適切に運用するよう管理されていることをイメージしています。
ヒューマンエラーは、この中心にあるL(当事者)の凹凸と、それを取り巻く各要素の凹凸がうまくかみ合わなかったところで発生します。
 
[ m-SHELモデルによる分析事例 ]

事例:5分粥150gの患者に別の患者の5分粥50gを配膳した。
要 因:
L- management(管理)  粥の盛付けに関する手順が決まっていなかった
L- Software(ソフトウェア)  同一のトレーに量の異なる粥を置く習慣があった
L- Hardware(ハードウェア)  お椀の種類が一種類しかなく不足していた
L- Environment(環境)  照明あたりが不十分で確認しづらかった
Liveware(当事者) 食札の150gの1の数字を見落とした
L- Liveware(当事者以外の人) 配膳前チェックでフタを空けて確認しなかった

 

表中の「食札の150gの1の数字を見落とした」という当事者のエラーだけに注目するのではなく、「管理」「ソフトウェア」「ハードウェア」「環境」「当事者以外の人」についても考慮する必要があります。すなわち、体調管理、仕事の打ち合わせなどを含め、各要素との隙間をなくしエラーを減らす努力が必要です。時にはこれらの要素がトレードオフの状態になる場合もあります。そのような時は各要素をうまく調整しバランスをとる必要があります。言い換えると、それぞれの要素がしっかりしていても、組織の管理が不十分であればエラーが発生する可能性があることを示しています。

 

1.自分の特性の理解
苦い経験をきっかけに、何らかの知恵を使ってヒューマンエラー の発生を防ぐ努力をしてきた経験がある人もいるでしょう。
怪我の功名というように、先ず、
a)失敗を強く反省し意識すること
b)いろいろ考えても発生した問題は消えないので
c)再発しない手を打つ

という考えは重要な考え方です。
ヒューマンエラーは個人が起こす問題です。だから、個人が自分の特性を知り、個人に合った対策を講じなければ、指導者が優秀でも再発します。個人が犯すミスの本質を語らず、教育や対策会議をいくらやっても効果は少ないでしょう。上記にあげたヒューマンエラーの事例を参考に予防に努めましょう。

 

2.努力しないとミスは止まらない
a)次のような間違いは注意しないと記憶に残らない。
  ・ソースと醤油を間違えてかけた。
  ・塩と砂糖を間違えて料理に入れた。
  ・間違って登録番号を記入した。
  ・間違ってエレベータを降りた。
b)  強く意識していない時にミスが起こる。
c)失敗しても大勢に大きな影響がないと考える時、チェックを無視する。
d)考え事や心配など注意すべき事が他にあって、注意がそちらに向いている時。
e)繰り返し発生するとAさんはそそっかしいなどと性格で評価される。
f)刺激に対して個人差があり、同じ刺激に対して同じような反応を一貫性を持って繰り返される。
 
この種の対象には、なおるまでの訓練が必要。本人の努力が必要になる。修正するメリットを本人が理解するほど効果が図れる。スポーツにおけるフォーム修正などの特訓がこれに該当する。

 ヒューマンエラーは個人が犯した問題ですが、このような問題に対しては、問題=個人の特性と決めつけて、人を責めるべきではありません。人にはそれぞれ個性があり、ミスを犯す形態も個々に異なる。そこで、自分の特性を知り、自らミス防止の知恵を絞って自分に合った防止策をまとめることが重要です。

 

(参考図書)

  • ヒューマンエラーの科学 村田厚生
  • ヒューマンエラー 小松原 明哲
  • ヒューマンエラーの分析と防止 谷村 冨男
  • ヒューマンエラーゼロ対策 中村 茂弘
                                       ブログトップへ