食品衛生の基本と5Sの徹底
1.食品業界の特徴
2)人の行為やパフォーマンスであるサービスの結果を数値化するのが困難
3)人の食生活のサイクルに基づいているため時間の要素が大きい
4)食材料は自然のめぐみに依存しているためバラツキが大きい
5)食中毒を起こさない微生物レベルの衛生管理が最重要課題
1) 人的側面により左右されやすい
2)サービスの数値化が困難
先に示した食事サービスの品質は、「美味しさ」とか「楽しさ」などのように人の感性に基づく品質項目が多いため数値で示すことが難しい。サービスは物理量の長さや重さなどのように数値で表すことが困難なため、官能検査によるランク付けなどを使って評価する場合が多い。
3)時間の要素が大きい
4)自然からの産物である食材のバラツキが大きい
5)食中毒を起こさない微生物制御が最重要課題
2.人材確保の困難な時代の5S改善
1)深夜・24時間営業・年中無休への対応
価格競争が厳しい業界であるため、処遇改善に必要な人材や賃金の確保が十分でない中で、利便性の追求による深夜・24時間の営業形態が拡大した結果、昨今の人手不足により安定した勤務シフトが組みづらい状況になっており、社会問題となりさかんに議論がなされています。
2)労働環境の改善
- 生鮮食品を取り扱うことから作業空間が低温状態(約15℃)の場合がある
- 逆に、揚げ物・蒸し物等を調理する空間では、高温にさらされ続ける。
- 作業工程によっては、同じ姿勢での単調作業が長時間継続する。
- 人手を要する作業が多く、機械化が容易に進まないため、置かれた作業環境は過酷である。
3)経営理念の共有やモチベーションの維持・向上
4)投資余力が小さい
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中小企業が多いため、資金力に乏しく、生産性向上に向けた投資をタイムリーに行うことが困難。
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人材の層が薄く、柔軟な雇用形態を導入するための仕事量の調整・再分配等が困難。人材不足が廃業に直結する可能性が高い。
食品衛生に関すること
・少子高齢化が進み家族構成や消費者の食に対する意識の変化による食生活の変化
・食中毒や食品による健康被害に対する意識の向上
・食のグローバル化に伴う、食品関連事業の国際標準からの遅れ
改正の一つにHACCP(ハサップ)の義務化があります。注目すべきことは、この改正の施行にあたって、食品業者の規模や業種などによって、次の二種類に分けて進められていることです。この考え方は5S活動の進め方に対しても、変える必要があることを示唆しています。
①「HACCPに基づく衛生管理」・・HACCPの7原則を要件として衛生管理を行う。
例)食品や食品添加物の製造し、従業員が50名以上の事業所
②「HACCPの考えを取り入れた衛生管理」・・厚生労働省が内容を確認した手順書に沿って衛生管理を行う。
例)飲食店、学校や病院などの給食施設など
つまり、ここで注意したいのは、業界の幅が広く、一つの方法ではすべての事業所で対応することができないと言うことです。つまり、5S活動の進め方も対象の企業の実態を良く調査したうえで、適切な手段・方法を使って推進しなくては良い結果は期待できないということです。
3.食品5Sの職場環境改善
清潔というと業種や考え方によって異なっています。いわゆる工業5Sでは、整理、整頓、清掃の3Sの維持ですが、食品業界が微生物レベルの清潔を目的としている点で違いがあります。また、食品業界の中でも5Sの定義は一定ではありませんが、微生物学的にもきれいな状態を保つという点では清潔に対する考え方は変わりません。工業5Sでも食品業界の5Sでも、5Sを定着させるということが前提です。
1)工業5Sの清潔
清潔
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整理 ー 整頓 ー 清掃
2)食品5Sの清潔 2つの考え方
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食品5Sの清潔:調理機器、器具は洗浄・殺菌を行い、微生物学的にもきれいな状態にする。洗浄・殺菌は清潔の中に包含されています。
整理 ー 整頓 ー 清掃 ー 清潔(洗浄+殺菌) ー 躾
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食品5Sの清潔:5Sが定着しており微生物学的にもきれいな状態を保つ、目的である。洗浄・殺菌は清掃の中に包含されており、清潔は直接的な「目的」です。
清潔
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整理 ー 整頓 ー 清掃 (洗浄+殺菌) ー 躾
3)食品7Sの清潔
整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌に関するマニュアルやルールを守ることを躾でコント ロールし、清潔を「直接的な目的」としていることを示しています。
清潔
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躾
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整理 ー 整頓 ー 清掃 ー 洗浄 ー 殺菌
このように食品5Sの清潔の定義は企業によって違いがありますが、最も大事なことはそれぞれのSが何を示しているかということではなく、「5S活動変化への対応と5Sの基本」の中でも書いたように、何のために5Sをやるかということです。